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モツ鍋フィーバーより誕生。

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祝・5周年!

気が付けば、11月25日にこのサイトも5周年を迎えました。わたしの可愛い弟が一人前の男になる年月が経過したんですよ!

色々と慌ただしく、なかなか更新がコンスタントにはいかない日々を送っているのですが、できる限り続けていけたらなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

続きから、5周年記念ということで短めのお話を久々に。ではではどうぞ~。

FAITH

「何やってるんだ?」
 束の間に訪れた、ささやかな休日の午後。
 オーフェンが居間に入ると、妻がソファに座って作業をしていた。
「あの子たちの繕いものよ」
 近づくと、膝の上いっぱいに服を広げているのが見えた。彼の声に顔を上げることもなく、針と布を動かす。足下の黒犬は目を閉じているが、妻の手の動きと呼応するように、リズミカルに尻尾を揺らしている。
「繕いもの――って、またあいつらは服を破ったのかよ」
 オーフェンは顔をしかめた。妻は縫いながら器用に肩をすくめる。
「今朝、あなたが熟睡している時にね。またいつもの姉妹喧嘩よ」
「今度は何だ?」
「さあ……何だったかしら。まあいつも通り、ラッツベインがエッジのタオルを間違えて使ったり、エッジがラッツの脱ぎ散らかした服を蹴り飛ばしたり、ラチェがつかみ合いを始めた上二人を黙らすために、壁に穴開けてクロスボウ発射させたりしたような」
「まあいつも通りだな」
「いつも通りよね」
 のんびりした口調でクリーオウ。昼食の際、娘たちが妙に大人しかったのは、彼女が何かしらペナルティを与えたためだろう(その内容については触れないことにする。我が家で平穏を保つためには欠かせないことだ)。
 話題を逸らそうと、オーフェンは妻の隣に腰を下ろした。
「それにしても、服を縫うくらいあいつらにやらせればいいだろ。三人そろって未だに甘えっぱなしじゃないか。ガキの頃と違って、もういいかげん裁縫ぐらいできる歳になったのにな」
「そうね。別に、そんなの自分でやってちょうだいって跳ね除けてもいいのよね。でも」
 クリーオウがぽつりとつぶやく。
「あの子たちの服を縫うことなんて、あと少ししたらもうできなくなるかもしれないし」
 糸の玉留めを切り、針を針山に刺す。弾力の良いクッションが、不意に硬くなった気がした。
 上のふたりの娘、ラッツベインとエッジの戦術騎士団入団をめぐり、激しい夫婦喧嘩を繰り広げたのは記憶に新しい。居心地が良いこの居間も、戦場と化した。娘たちが珍しく一致団結し、両親の言い争いを制止しようと右往左往していたのが記憶に蘇る。
「……そうだな」
「あなたを責めてるわけじゃないんだけど」
 妻は衣服を傍らのソファに載せた。苦笑に寂しげなものを混ぜる。
「わたしが何て言おうと、三人とも好きなようにやらせるしかない。小さい頃と同じままの態度で、守ってあげることはできない。でも、ほんの少しだけ……どんなことがあっても、いつだって、いくらでも甘えることが許される。そう思える余地ぐらい、示してあげてもいいでしょう」
 親なんだしね、と続けた彼女の言葉にうなずく。仕事のことには口出ししないと約束したのだから、これ以上クリーオウが愚痴を吐くことは恐らくないだろう。そして想いを胸にしまい、いつも通り家族が快適に過ごせるように家を整える。
 自然とオーフェンは口を開いていた。
「俺もその余地を忘れないようにするよ」
「どうやって?」
「仕事をする以上、騎士団では上司と部下だ。他の奴らと同じ態度で接する。娘だからと言って、贔屓する真似はしない。だが……」
 じっと見上げる妻の瞳を覗き込む。二十年経っても変わらない、澄んだ青い瞳に誓いを立てるように。
「父親だっていうことは忘れないようにするさ」
 クリーオウの瞳が細まる。彼が言葉にできる精一杯を吟味するように、ゆっくりと瞼を閉じた。
「約束ね」
「ああ」
 再び開いた瞳には、微笑む色がある。互いに見つめ合う数瞬、言葉はなかった。
 好きな選択ができる余地が少ない現実であっても。どんなことがあっても、妻の願いのために約束を重ねることに躊躇いはない。
「そういえば」
 クリーオウが首を傾げた。
「前にも何か、こんなことがなかったっけ」
「? 忘れないってことか?」
「うーん。何だっけ。ほら、昔旅をしていた時に。わたしとマジクがお腹減ったって言って倒れかけて、そうしたらあなたが、一応お前たちの保護者ってことを忘れたわけじゃねえぞって、とにかく山に入ってキノコを探してくれなかったっけ?」
「あったかそんなこと」
「ええと、タフレムを出た後だった気がするんだけど……」
 肩を寄せ合い、遠い過去の彼方にある記憶を、ふたりで掘り起こしていく。過去を振り返る作業は久々だったが、悪いものではなかった。
 触れる妻の身体は暖かい。
 何も特別なことは起こらない午後が、何事もなく過ぎ去っていく。



ラブラブな夫婦を堪能した、「なんの話やら」@『しゃべる無謀編7』より。信頼しあっている夫婦のひとときを描けて楽しかったです。
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2013-12-03-02-24 短編 : コメント (0)件
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リセ

Author:リセ
『オーフェン』後日談連載がきっかけで誕生。秋田禎信作品の二次創作や感想など。

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