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モツ鍋フィーバーより誕生。

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悲惨で美しい世界の終わり(下)

『鋏の託宣』総括感想の後半戦です! なんかこっちの方が長くなったような…。

とにかく、これで完結します。続きからどうぞ!

ここで社会情勢がどうこうと、具体的には言いませんが、我々の現実世界だって、不安と絶望が渦巻いているよなと思います。
それこそ、世界(ピンポイントで日本と言ってもいい)の崩壊を何とか食い止めようと、命がけで働いてる人たちが、ある時ふと「もうこんな世界なんてどうでもいいや」と、やらなければならないことを放棄したら終わってしまう、そんなところです。

「分かりやすい悪党ひとりを倒せば、全ての問題が解決できる」楽園はとっくにない。
じゃあ、絶望と共に「何か」がある世界で、どう生きていけばいいのか? 「詰んだ」(この言葉は個人的に嫌いです)状況から現実逃避して、目を逸らし続ければいいのか?
ままならない現実への怒りは、誰にぶつければいいのか? 大きな避けられない災厄を前にして、個人は何をすればいいのか?

この先、私が尊敬している人の言葉をちょっと借りて表現すると、もう「オーフェン」世界の住人も、現実にいる我々も、後戻りできない状況にいるんだと思います。
綺麗事を謳うことなんて不可能なくらい、ずぶずぶの泥沼に腰まで浸かって入り込んでしまった。汚れ切った身体で、関係ないような辺りまで泥を飛ばして汚しまくった以上、泥沼から出て綺麗な身体に浄化しよう、と高らかに宣言しても無理なんです。

でも、だからと言って泥沼の中で生き続けることを放棄するわけにもいかないのです。もうダメだ、と思考停止して留まり続けるわけにはいかないんですから。
『虚像』でオーフェンが断言したように、限界のある肉の身体を持った人間は、存在価値の理由なしに、ただあるだけで生きていかなきゃならない存在なんですしね。

そりゃ、いつかは足が泥にとらわれて倒れ、そのまま沈むかもしれません。実はもう胸まで泥が迫ってきて、窒息寸前なところまで来てしまっているのかもしれません。
どんな形になるにせよ、敗北や死は避けられない。だけど、その危険と付き合って生き続けることは可能なのだと思います。危険を根本から除去できなくても、どう付き合っていくのか?という方法を、探って行くことはできるはずなんです。

新シリーズの大人達、特にオーフェンやマジク達はシビアです。過去のトラウマに囚われて辛いから早く死んでしまいたいボクちゃん死にたがり、なんて甘ったれたお花畑的アホなことは言っていません。
常に死と隣り合わせで、誰かから殺されてもおかしくないことを散々してきた。だからいつでも死の可能性を念頭に置いている。

けれど、「やらなくちゃならない仕事を全うする」。死ぬ方が容易に楽になれるけれど、果たすべき役割のためにそれをこなす。己の感傷なんかに酔う暇がないくらい、差し迫った事態があるのだから。
己の身の丈で責任を果たすこと。そんな「大人」としての義務を選択し続けているんだと思います。

それに、この状況を切り抜けられれば、また罪を背負い続ける苦痛が続くとしても、生き残ることはできるかもしれないのですし。エッジが三強衰弱後の騎士団の行く末について考えていたり、ドロシーの苦々しそうな口ぶり(あんたはもっと手酷く敗北するべきだったのよ)でも、今後のことをオーフェンと交渉したりするのを見てると、別に誰もがオーフェンが死ぬこと前提で動いている訳ではないと思います。
イザベラ先生の場合は、死に場所を探していたのではなく、最後まで誇り高い魔術士として、己の人生を“生き抜いた”んだと思います。自分の遺恨に決着がついたから、満足した笑顔で去ったんでしょう。

また、大人世代の中で、クリーオウが(建前上)前線を退いている理由ですが、責任を果たして戦う彼らを理解し、彼らが帰ってくる場所を守る役割を自ら選択しているためかなと思います。
20年以上夫を支えて、その孤独と寄り添ってきたから、とっくのとうに覚悟を決めて見守っているんでしょう。

個人的には、外部では恐れられているオーフェンやマジクが、フィンランディ邸ではただの立場の弱い夫や父、師匠や叔父でしかないというのが救いであると思います。
オークリ、クリ&マジ、オークリマジク三人組の、それぞれの関係性自体は、昔と変わっていませんしね。ただ、オーフェンとマジクがぎこちない師弟から、変化して対等な関係になれて良かったなとも思います。

「邪魔なものは排除していく、でも全てをなかったことにはできない。やれる範囲でやる。後の残りは頼む」。
泥沼の泥を根こそぎなくして苦痛から解放するのではなく、せめて高い足場を探したり、泥を掻き分ける道具を見出したりするのが大人世代の役割なんだと思います。

子供世代は、マヨイシやラッツ&エッジ、ラチェ・ヒヨ・サイアン、ベイジット&ビィブと、常に複数人で行動し、いざという時に皆で支え合っています。
それが頼りないこととは思いません。互いを補い支え合うことで、それぞれが役割を果たしていきます。

映画『パシフィック・リム』のパンフレットに、「この映画では多国籍の人々が協力し合って、カイジュウに立ち向かっている。少し前のハリウッド映画、大統領ひとりが犠牲になって世界を救う『インディペンデンス・デイ』の時代は終わった。今は危機に対して、皆で立ち向かう時代である、ということを反映している」というような記述がありました。
きっと、子供世代のあり方は、この現実を反映しているんじゃないかなと。ラッツ&エッジが支え合ったり、マヨール&イシリーンが手を握ったりするシーンが印象に残っています。

新シリーズは過去の精算をするかのように、伏線を回収したり、設定を上手く補強しています。
また、追う追われるきょうだい、組織に縛られて失敗する大人と、旧シリーズの変奏曲のようでもあります。

ですが、マヨールとベイジットは色々な人物と出会い価値観を見直すうちに、きょうだいを理解し合う兆しがあります。
ラチェットやベイジットは魔術士であることを辞め、新たな生き方を選択しようとする「希望」を自ら見出しています。

時代は変化していく。それは誰にも止められない。けれど、それはきっと悪いことばかりではないんだと思います。
どう状況が動くか分からないですし、分かりやすい救いがあるとは思えない。でも、まだ何一つ世界は終わっていないんです。

個人的に、新シリーズの感触に近いと感じるものは『ベティ』です。目的の達成=世界情勢の解決ではない。父の仇を討つという目的を果たしても、世界がベティに優しくなるわけではない。
でも、ベティにウィリアム、フラニーはそれぞれが救われる道=楽園を選択せず、厳しい現実でも仲間たちのいる世界を選択して帰還しました。

オーフェンの場合は、目的と世界情勢が絡んでいるので、事情は複雑なのですが、もしかしたら『ベティ』のような決着がつくのだろうか?と思います。
(ラッツエッジラチェの力で、ヴァンパイアライズの力だけ剥がせないのか、とか)

正直、千年ぼっちで人の気持ちも本質的に理解できないスウェーデンボリーの言葉を読んでるとムカついてくるんですよね(笑)。ずっとオーフェンを支えてきた家族や仲間たちの力を信じないのかよ、という反発心もあります。
巻をぶつ切りで読むと不安になるかもしれませんが、通しで読むと違う感覚になりますよ。

君は捨てるのが得意だとかいざとなれば娘を差し出す奴だろって言うけどなー、「捨てられる側」にも意志はあるんだよ!
故郷のキエサルヒマから甥たちが追いかけてきたし、ラッツベインも自身の意志で「人の役に立つと思ったからこの仕事を選んだ」と腹を括ってるんだってーの! …といった感じで。

来年2014年で『女神未来(下)』が刊行され、「オーフェン」は完結すると思いますが、この年はちょうど『獣』から数えて20年。
リアルタイムでオーフェン達の人生を追体験できて、今、その終わりに立ち会うことができる。それが何より幸せです。

もうこれ以上、私は「オーフェン」に望んでいることはないんです。ありえない夢をたくさん見せていただきました。楽しい思い出を、いっぱい作っていただきました。
私は、旧シリーズは所詮は富士見全盛期の“あの時”の作品でしかないと思っています。願うのは構わないけれど、今更メディアミックスしても無意味だし、採算が取れなさそうな夢物語だよね、と思っています。新シリーズも、現在のトレンドや読者ニーズからはぐれていると感じていますし。

でも、はぐれ者のやり方で、不特定多数の大勢ではなく、“あの時”の元・少年少女で社会人になった人達へ、密度の濃い物語を届けている。
この新シリーズに込められているのは、きっとこの厳しい現実世界を生き抜く術だと、私は思います。
今だったら何となく分かる気がする、10年前の精一杯のメッセージだった「奇跡に似た何か」を形にしているんだと思います。

読者にできることは、オーフェンたちが出す答えを受け止めること。その答えを自分で咀嚼すること。そして今度は、次の世代のために、大人としての役割を果たすこと。

私の解釈は以上です。まずできることとして、『女神未来(上)』を安らかな気持ちで受け止めたいと思います。

(終わり)
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リセ

Author:リセ
『オーフェン』後日談連載がきっかけで誕生。秋田禎信作品の二次創作や感想など。

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